1.布団のプロが敷布団の選び方に硬さを重要視する理由
敷布団の選び方として「硬さ」をもっとも重視する圧倒的な理由があります。
それは、人が「仰向けで眠る」のに硬い布団が適しているからです。
横向き専用のやわらかい敷布団に寝ると、仰向けのときに腰が沈みすぎて、寝にくくなり、すぐに横向きになります。
硬い敷布団では、仰向けのほうが気持ちいいので、自然に仰向け時間が長くなります。
よくテレビの番組で、
「横向きで背中が一直線。キレイな寝姿勢」
などと宣伝していますね。
たしかに横向きのときには背骨が一直線になるのが理想的だとは思います。
ところが、人がひと晩眠るときの理想的な比率は
【仰向け寝が70%、そのほかが30%】
であると、研究から導き出されています。
横向き時に背骨が一直線になること優先して敷布団をつくると、どうしても真ん中がやわらかくなります。
すると、腰の部分が落ち込んで、仰向けでは腰が痛くなりやすいため、横向きで寝てしまいます。
1-1【なぜ仰向けがいいの?】
ここで、疑問に思われる方がいることでしょう。
なぜ、仰向けのほうがよいのか?
横向きでもいいんじゃないの?
その質問にお答えします。
櫻道ふとん店は、信州大学繊維学部と、眠りと布団の共同研究をしています。
たまたま私が信州大学を訪問したとき、世界的にも有名な一流企業・某製作所様の担当者が、「最新鋭の血流測定器」の点検に来られていました。
その方とは以前から別の場所でお会いしているため、気軽に声をかけてくれました。
「今日はこいつの点検に来たんだよ」
「これがとても優秀でね、赤と青のシールみたいのがあるでしょ。これを測りたいからだの部分に貼るでしょ。すると、こちらのパソコンに、血流量と、心拍数と、血中酸素量が出るんだよ」
「今までは注射で血液を抜かなければ・・・。だったけど、シール貼るだけでリアルに出るでしょ?」
教授が、
「実験機で、使ってくれっていうので置いてあるけど便利だねぇ。購入するといくら?」
「出はじめなんで1億。病院へ納める予定で、量産の道が付けば4千万かな?」
「えー高っ!」なんて話をしている横で、学生さんが仰向けで寝ていました。
「櫻道さん、今この人の血中酸素量が、からだの4か所で、99%以上でしょ。酸素が十分にたりてるってことです。ちょっと横向きになって!ほら、97%でしょ」
「先生、97%でもいいんじゃないの?」
「若い学生さんの場合、95%を切ると、少なすぎるんです。私たちからすると半分に減るような感覚なんですよ。仰向けの場合、肺がしっかり広がるため、オキシヘモグロビンがたくさん流れることができるんです。横向きだと肺が広がらないから、少し酸素がたりないですね。お年寄りはもっとたりないかもしれませんね」
「先生、血中酸素が少ないと、何が起きます?」
「通常、酸素をいっぱい持ったヘモグロビン、オキシヘモグロビンがからだをめぐって、細胞で酸素と二酸化炭素の交換をします。またこのときに、老廃物も引き受けます。そして、汚れた血液デオキシヘモグロビンとなって戻ってきます。肝臓、腎臓などで汚れを落として、肺でまた酸素を受け取り、体中をめぐります。この効果が半分になるのです」
「ということは?」
「仰向けのほうが疲れが取れるといえますね。でも、寝返りは必要なんで、ひと晩の眠りの時間のうち3割が横向き寝、7割が仰向け寝というのが理想的だと、僕は考えます」
この血液の流れの話だけ聞いても、仰向け寝のほうが疲れが取れやすいということが分かりますよね。
この後、ほかにもいろいろと教えていただき、以来、私は仰向け寝に適した布団を選ぶのが健康にいいと、人にお伝えし続けているのです。
2.敷布団の硬さと選び方<やわらかい布団に寝ると?>
やわらかい敷布団に寝るとおもに3つの点が気になります。
①腰への負担
②からだのS字カーブ
③寝返り
それぞれを具体的にみてみましょう。
2-1【腰への負担を考えた敷布団の硬さと選び方】
やわらかい敷布団は体圧分散が得意です。
しかし、体圧分散しすぎてしまうと、腰が痛くなる原因になります。
やわらかい敷布団はなぜいけないのでしょうか?
やわらかい敷布団で眠ると、からだの重い部分が下へ沈みます。
人体で一番重い部分はどこでしょうか?
頭?と思われる方が多いのですが、実は腰の部分です。
人体の42~45%がここにあります。
内臓が詰まっているからです。仮に、体重60kgだとすると、25kg程度が腰の部分にあるということです。
お米を25kg持ったことがありますか?
かなり重たいですよね。
お米を抱えているようなものなので、敷布団にはかなりの負担がかかります。
ちなみに、頭は8%なので4.8kg。
腰と比べるとかなり軽く感じますが、ボウリングの玉の重さがこれくらいです。
重たいですよね。
頭には枕をしますので、こちらはまた別の話になります。
こうしたことを知っていれば、敷布団の選び方も変わってきますよね。
さて、体圧分散の考え方は、この重たい腰を、からだ全体で持ち上げようというものです。
たとえば、床のような硬い敷布団だとすると、曲線でできたからだの腰の部分や、かかとのアキレス腱、首などは床に接触していません。
寝たきりの方々が寝だこ(床ずれ・褥瘡)でお悩みの部分は、これとは反対に、接触し続けているかかと、腰、胸部分の背中の3部位です。
この寝だこを軽減しようと考え出されたのが、低反発敷布団です。
硬い敷布団では接触しないアキレス腱、腰の上部分、比較的圧力の薄い太ももなどを使って、からだにかかる圧力を分散させようと考えたのです。
そして、横向きになったときも、キレイに体圧分散すると、背骨が一直線ということになるのです。
敷布団の選び方次第で変わってくるということがよくわかると思います。
この考え方の結果ですが、褥瘡は依然として治らず、新たにできてしまいました。
理由は、褥瘡は皮膚の内側が腐ることが原因でできてしまうことから、体圧分散をしても圧力の面積が広がるだけで、血液が圧迫される部分が減らなかったからです。
また、体圧分散によって、重要な3点の圧力を下げても、血液の流れを良くするほど分散はされなかったからです。
反対に、点で支える高反発のほうが、血液を止める面積自体が減り、褥瘡になりにくいのです。
ただ、硬すぎると痛くて眠れません。
床のような状態は、体圧分散がまったくない状態です。
適度な体圧分散は必要です。
ただ、前述のように体圧分散しすぎると、腰痛の原因になってしまいます。
さまざまな観点から考えると敷布団の硬さや種類、選び方も、人や環境によって変えていく必要がありますね。
2-2【からだのS字カーブを考えた敷布団の硬さと選び方】
低反発などやわらかい敷布団には、弊害がありました。
やわらかすぎると、背骨が一直線になるのです。
横向き時は一直線でよいのですが、仰向け時には、背骨がアーチを作らなくてはいけないのに、背骨が一直線になります。
すると、はじめのうちは寝心地がとてもよいのに、だんだんと、疲れがたまるし、腰は痛くなりだし、以前よりもひどくなることがあります。
ただ、寝心地がよいため、腰痛の原因が敷布団だとは気がつかないのが難点です。
腰痛になる理由は、腰の骨が一直線になることです。柔かい敷布団に寝るとS字を作らなくてはいけない腰の部分の背骨の並びが、一直線になり、筋肉が緊張状態になるのです。
すなわちお米25kgの重さが腰にかかり続けることになるのです。
道路や鉄道の橋のように重たいものはアーチを描かなければ、筋肉が頑張るしかありません。
きれいなS字がかけて、アーチができると脳波がアルファー波になり、リラックスモードに入ります。
すると筋肉もやわらぐのです。
やわらかいふとんだと、仰向けになってもこのアーチができません。
まして、一直線でずーっと緊張状態のままなので、自然に横向きになろうとします。
横向きになって軽く膝を曲げてアーチを作ります。横向きになると、血流と血中酸素量が半分以下になるため、同じ時間眠っても仰向けに比べ疲れが取れにくくなります。
からだのつくりを考えた敷布団の選び方が大切なのは、こういうわけなのです。
2-3【寝返りを考えた敷布団の硬さと選び方】
ひと晩に寝返りを打つ適度の回数は、20~30回です。
これは、同じ姿勢で寝ていると、敷布団やマットレスに接触している部分の血行が悪くなり、ひどい場合は褥瘡になるからです。
「私は朝までずーっと同じ向きで寝ています」
という人でも、大きな寝返りはしなくても細かく小さく寝返りを打っているはずです。
大きな寝返りを打つ人と、そうでない人がいるのです。
硬い敷布団で眠ると、寝返りを打つときに、硬いので楽に打てます。
このとき、脳波は乱れません。
ところが、やわらかい敷布団の場合、
「よっこらしょ」
となるので、寝返りを打ったのを覚えている人がいます。
これだと明らかに眠りが浅いのです。
寝返りをしたことを覚えていないほど深い眠りにならないと、
たくさん眠っても
「なんかまだスッキリしない」
「疲れが取れなくて、だるい」
「え~こんなテンションで学校?行きたくない」
なんてことがおきやすくなります。
硬めの布団で、寝返りをしたのを覚えていないほど深い眠りになるようにし、スッキリ起きましょう。
敷布団の硬さや選び方次第で、朝の快適さが変わるなんて、ちょっと驚きじゃありませんか?
3.敷布団の硬さと選び方<数値で守れる?布団の硬さ>
敷布団のちょうどよい硬さは再現できるものでしょうか?
天然繊維は、木綿で100種類の糸の長さ、太さがあり、また原産地で硬さが変わります。
羊毛の場合は何と3,000種類。
これらは農産物なので、毎年できが少し違います。
ですから布団をつくる際は、コーヒーのブレンドのように、いくつか混ぜます。
わかりやすい例をあげると、木綿とポリエステルを混ぜて調整するのです。
ポリエステルも、糸の太さ、長さが違うものが300種類くらいあります。
木綿がいつもよりやわらかいなと感じたら、少し硬いポリエステルを入れると、同じような硬さになります。
本当はもっと細かな作業をするのですが、このようにして、毎年同じような硬さ、スプリング感が出るようにします。
これは、長年の職人の感覚です。
そして、でき上がりの感触を、確かめながらつくります。
余談ですが、マイスターの私は、静岡県の寝具組合の先生です。
布団屋さんに布団のつくり方を教えるのですが、布団の見方を知らない職人さんが、なんと多いことだろうと、悲しくなります。
もちろん、国家検定1級技能士ともなれば詳しいのですが、皆さんそんなに多くは取得していません。
さて、いったん決めた硬さを数値で守れる素材があります。
化学製品です。
ポリエステルは「デニール」、ウレタンは「ニュートン数」。
どちらも機械製品なので均一なはずです。
ポリエステルの糸も、台湾製と日本製では同じ規格のはずなのに、硬さが違ったりします。これは現地の湿気、気温、などの条件だと思われます。
また、外国産は日本ほどしっかり管理されていないので、仕入れるたびに少し調整が必要です。
ウレタンも、体育館のような大きい工場で、巨大な食パンのような形でウレタンが出てきます。
食パンは、上のほうと下のほうで少し硬さが違うのを知っていますか?
上のほうは気泡がたくさんあって、下のほうが密度が高いのです。
この食パンのようにでき上がったウレタンをスライスして小分けにします。
すると、上部と下部では同じ規格なのに誤差が出てしまいます。
JIS規格で許される誤差のプラスマイナスの差が、実は大きすぎて、職人の私たちにはとても許せるものではありません。
毎日たくさん作っているので、
スライスされたウレタンを持ち上げた瞬間のしなり具合と、
手で持った感触で「あれ?」と思いながらいつものように検査機で測ると、
やっぱり違う。
で、原料屋さんにフィードバックするわけです。
櫻道ふとん店が規格にうるさいのを知っているので、原料屋さんもすごく気を使ってくれてますが、たま~に返品せざるを得ないこともあります。
JIS規格の何倍も厳しく硬さと密度で管理しないと、いつも同じ品物は出せません。
そういったわけで、化学製品も、日本製のものであっても、厳しく品質管理をしないと、ほんの少し品質の違う製品ができてしまいます。
このほんの少し、ほんの少しが積み重なっていくとやがて大きな差が出ていってしまうため、櫻道ふとん店ではほんの少しにも気を使ってます。
原料の選び方から気を配っているからこそ、自信をもっておすすめすることができるのです。
4.敷布団の硬さと選び方<硬すぎると、やわらかすぎると>
硬い敷布団がよいといっても、あまりにも硬すぎると、圧痛点というのが出て痛くて眠れません。
この圧痛点というのは、圧迫されて痛くなるところという意味で、床に仰向けで寝ると、尾てい骨のあたりや、かかとなどが痛くなります。
すると、痛くて眠れなかったり、眠りが浅くなったりします。
また、反対にやわらかすぎると腰が痛くなり、長時間になればなるほど、背中が曲がり、寝返りを何回も打つようになり、深い眠りにたどり着けません。
敷布団の選び方によっては、こうしたことも起きる可能性があります。
5.敷布団の硬さと選び方<寝ている間が大事な子供の姿勢>
生まれてすぐの赤ちゃんの睡眠時間は、ほぼ24時間。
「ミルクを飲んで寝る」の繰り返しです。
3歳までの第1次成長期は、
いつでも成長ホルモンが出ていますので、ぐんぐん育ちます。
中学生くらいに訪れる第2次成長期を経て、私たち大人とシステムが一緒の「大人の眠り」になります。
この第1次成長期と第2次成長期の期間は、眠ると成長ホルモンが出ます。
「寝る子は育つ」の格言はここからです。
そんな、睡眠が大事な時期だからこそ、敷布団の選び方って大事だと思いませんか?
生まれてほぼ24時間の睡眠時間が、成長すると16時間、12時間、9時間と減っていきます。
20歳までは9時間程度本当は必要なのですが、現代人はそんなに寝ていられません。
もし、日曜日にぐっすり眠れる時間があるときは、12時間でも寝かせてあげて欲しいくらいです。
人生の3分の1は眠りの時間といってもそれは大人になってからの話で、
実は子供時代は眠る時間が半分くらいは必要なのです。
その半分で、何をしているかというと、身体と脳と精神の成長です。
敷布団の選び方は、
いかに健康なからだに育つかを左右するといってもいいほど、とても重要です。
なにせ成長の半分以上を担っているのですから。
背骨がきれいにS字を描けるか、
寝返りをどれだけ楽に打てるか、
自然とに仰向けになれる構造になっているのか、
が見極める判断です。
敷布団の選び方の基準にもしてください。
脳は、20歳まで脳細胞が大きくなり、そのあとは小さくなっていきます。
このとき、寝返りを楽に打てると、重力を感じて刺激をいっぱい受けて脳細胞が活性化します。
特に小さいときは両親に寄り添って眠り、肌感や守られている感を感じてリラックスします。
愛されている・安心・守られていることを感じ、自分が生まれてきてよかったのだ、自分は大切な存在なんだという自己肯定感が増し、脳細胞はぐんぐん大きくなり、たくさんの刺激を積極的に取り入れるようになります。
私の持論ですが、子供の間はフローリングに敷布団をくっつけて並べ、親子みんなで並んで眠るのがよいと思っています。
子供が思春期になるに従って、少しずつベッドに・・・。
そして、年をとったらベッドにするのがよいと思っています。
眠りの時間がからだも心も成長させるのですから、敷布団の選び方にも慎重になりたいものですね。
6.精神の成長も硬い敷布団での仰向け寝から
なぜ眠りと精神が関係あるのでしょうか?
睡眠には「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」というリズムがあり、それを繰り返しながら大きい波から小さい波へ移行して、やがて目が覚めます。
レム睡眠は脳が活性化している眠りです。
ノンレム睡眠は脳が休んでいる眠りです。
この「脳が休んでいる」状態が一番重要だと、わかりはじめています。
脳科学では、このとき、脳はいらない情報を圧縮していると考えられています。
使わない情報とすぐに取り出せるようにしておいた方がよい情報を分けているのです。
たとえば、今、この一瞬、あなたはこの画面を見ています。
部屋の温度はちょうどいいですか?
今、どんな音が聞こえてますか?
どんな洋服を着ていますか?場所はどこですか?
何かのにおいはしてますか?
など、この一瞬にも、ものすごい情報量をこなしています。
この情報、
記憶しておくもの、
すぐに取り出せるもの、
捨てたいものと、
分けたいですよね。
眠りの間は情報量が格段に下がるため、
日中できなかった処理をノンレム睡眠の時に高速で行います。
パソコンのデフラグのようなものです。
もっとすごいのは、情報と情報をつなげたりします。
今の悩みを解決しようとして、どうしたら解決できるかを眠りの間に考えたりもします。
有名なのはアインシュタインです。
彼は毎日10時間眠ったそうですが、必ずノートを頭の上に置いて、眠っている間にひらめいたことを、無理して起きてメモを取っていたそうです。
それを彼は「神の時間」と言っていたそうです。
また、人は自分の都合のいいように記憶を変えます。
自己暗示です。
たとえば見たくなかった事件をたまたま見てしまった場合、思い出さないようにしてしまったり、その場にはいなかったことにしてしまいます。
そして、自分の精神が耐えられるようになったときに、急に思い出したりします。
このようにして、眠りでストレス軽減、悩み対策、すっきりした情報処理を行います。
この情報の処理は、眠りが深くないと効率的に行われません。
眠りを深くするのには、仰向け寝が効果的です。
眠ってすぐ訪れるのがノンレム睡眠です。
このノンレム睡眠には深さがあります。
4段階で測りますが、仰向け寝だと一番深い眠りまで到達しますが、横向き寝やうつ伏せ寝だと最高でも2段階までしか届きません。
4段階中の3段階すら届かないのです。
ストレスを軽減するはずの眠りで、ストレスが処理できないので、起きたときに憂鬱な気分になるのです。
仰向けでしっかり眠って、少しずつストレスが軽減されれば、だんだんと前向きに人生が送れます。
両親の立場では、登校拒否や、いじめの問題(受ける側も攻撃するほうも)将来への不安などで子供の元気がない姿を見るとつらいですよね。
スマホの時間を控えて、眠りの時間を増やすようにしてあげてはどうでしょう。
眠りの時間をしっかりと確保すれば、精神の成長にも手助けとなります。
そのためにも、ぐっすりと深い眠りにつける敷布団の選び方が重要です。
7.自分にあった硬さの敷布団の選び方
自分に合った敷布団の硬さはどうやって選べばよいのでしょうか?v
もし、試し寝ができるのなら、
自分が「気持ちよい」と感じた敷布団より「少し硬め」を選ぶのがコツです。
敷布団を寝心地で選ぶとき、
人は自分の筋肉と同じ硬さを「気持ちいい」と感じます。
毎週2時間以上運動している方々は、自分のからだをしっかり支えるだけの筋肉が付いています。
自分の筋肉の硬さと敷布団の硬さが同じのが好きなので、運動をしっかりしている人は硬めを選びます。
それだと、寝たときにからだを支えられますね。
ところが、現代人はたいてい運動不足なので、自分のからだを支えるだけの筋肉を持っていないまま選びます。
すると、からだを支えられない敷布団を選んでしまうことになります。
ですから、自分には少し硬いかな?
と思われる敷布団、マットレスを選ぶのが選び方のコツとなります。
櫻道ふとん店の「腰いい寝」「快眠の王」は、
体重47kg~75kgまでを対象に作られている「硬め」の敷布団です。
よそで試し寝ができないときは、こちらをお選びいただけば、間違いありません。
遠方の方もお試しレンタルで硬さを体感していただけます。
運動不足気味の方や、女性には少し硬いかな?
と感じられるかもしれませんが、3週間のお試しの間に硬さに慣れてきます。
慣れてくると、この硬さでないと眠れなくなってきます。
私自身の話ですが、旅館やホテルに泊まると、やわらかさが気になってなかなか眠れないときがあります。
また、体重と身長で匠がつくるオーダーメイドマットレス「腰いい寝リッチ」「快眠の王リッチ」は体重で硬さを選び、身長で大きさを指定していただくと、3週間から1か月であなたのからだに合わせ、最適におつくりいたします。
8.硬さから考える敷布団の選び方<ウレタン体圧分散>
とてもやわらかいのからとても硬いのまで、自由に作れるのがウレタンです。
体圧分散に優れたウレタンも作れます。
ただ、単純にからだを平面で受け止めようとすると、低反発系のやわらかいものになります。
「高反発で体圧分散ができる」
なんて書いてあるサイトがたくさんありますが、
何か工夫をしないと、そのままでは体圧分散なんてできません。
私が気になって仕方ない、あるホームページがあります。
ビフォーアフターのように体圧分散のA図とB図を並べて掲載しています。
これを信州大学繊維学部の先生や生徒さんに見ていただいたところ
「コレ、人が違うんじゃない?体圧の分布図のこの圧力がこの辺に出ないといけないはずなのに、出ていないし、点の数と色の数を総合して体重を鑑みると、違う人の可能性が高い。または何らかの意図的な処理?」
なんてことを話し合っています。
そもそも、おなじ平面で、硬い敷布団とやわらかい敷布団では、接触する面積はどちらのほうが多いと思いますか?
何度もお伝えしてきた通り、やわらかい敷布団ですね。
つまり、何か工夫をしないと、硬い敷布団のままでは、体圧分散ができないのです。
うまいうたい文句だけに惹かれた選び方にならないよう気をつけてほしいものです。
硬いウレタンでの工夫ですが、
たとえば凸凹加工(プロファイル)をすると卵のような形をしてますので、
硬い素材でも凸凹の上のほうはやわらかく沈み込み、
ちょうどよいからだの沈み込みのところで止まります。
また、凸凹にカットされているので、表面積がかなり大きくなります。
このように工夫をすると、硬いウレタンでも適度な体圧分散ができます。
硬い敷布団で体圧分散をするのには、形状の工夫など、要求が高くなります。
それに応えられる素材は今のところウレタンの右に出るものはありません。
もっとも扱いやすく、廉価なのです。
9.布団マイスターが実際に眠って実感した『素材別:硬い敷布団』ランキング!
私は長年腰痛に苦しめられた経験から、いろんな敷布団を試し、実際に眠ってその性能や硬さ、寝心地を体感してきました。
また、職人として深い興味を持ってさまざまな敷布団を研究し続けています。
その私が「硬さ」を重視して、敷布団の素材をランキングした結果をお伝えしましょう。
硬い敷布団の選び方のご参考にしてみてください。
1位 ウレタンの敷布団
ウレタンは、車の衝撃吸収バンパーにも使われるほど硬くできます。
このバンパーは、ぶつかったときにはへこんでますが、1週間もすると元に戻っています。
櫻道ふとん店では、この自由にできる硬さを調整して素材開発をし、敷布団にしています。
2位 樹脂の敷布団(「エアウィーヴ」)
硬さを公表していないので、私の手の感覚ですが、高反発といってもウレタンの170ニュートンの高反発よりはやわらかいです。
特に、ベッド用に作られた厚いタイプの中空繊維(ストローのように穴が開いている)のマットレスは、軽さを重視してつくっているため繊維が細く、やわらかめに作ったようで、復元力も弱いです。
3位 固わたの敷布団(ポリエステル圧縮)
樹脂の敷布団(「エアウィーヴ」)の素材はポリエチレンですが、いわゆる「硬綿」と書かれている敷布団の素材はポリエステル繊維です。
ポリエチレンは水より軽いのですが、ポリエステルは水より重い繊維のため、硬綿を素材にした敷布団も重くなります。
ただ、これは糸の太さの場合の比較。実際の敷布団にすると、「エアウィーヴ」は断然太い糸を使用しているため、結果的には硬綿の敷布団のほうが軽いということになります。その分、硬さでは「エアウィーヴ」に劣ります。