1.なぜ、羽毛布団の外側に毛布をかけるのがいいと言われてるの?
戦後、日本では木綿の掛け布団を使っていたご家庭がほとんどでした。やがてここに、海外から毛布という品物が追加されました。
毛布はそれまでなかった柔らかな肌触りで、さらに良い繊維が次々と研究されると共に毛布のない家庭がないほど普及し、木綿布団の内側に、毛布を掛けることが一般的になりました。
昭和から平成の時代に移ると、少子高齢化とともに、住環境が変化してきました。応接間、キッチン、寝室など、一人当たりの居住面積が格段に増えました。
それに加え、一人暮らしの人数も増え、居住面積が増えて、ベッドの保有台数も増えました。
現在、ベッドを利用している率が60%以上もあります。あわせて羽毛布団も普及し、掛け布団は羽毛布団という方がとても増えました。
ところが羽毛布団は、それまでの化学繊維で作られた毛布の相性が良くなかったのです。
1-1.冬の毛布は副寝具です。まずは、毛布の役目を知ろう!
洋服に例えると、主寝具はジャンパーなどの上着。副寝具は肌着などのインナーです。
上着である主寝具は羽毛ふとんや木綿掛け布団などの厚みがある冬に使う保温力が高い寝具です。
副寝具はインナーの役目なので薄くて体にぴっちりした寝具です。副寝具はそれ一枚では寒いと感じる薄さのほうが良いのです。肌掛けふとん、タオルケット、そして、毛布も副寝具。
本来であれば、内側に毛布をして外側には羽毛を掛けるという順番で使うと、とても暖かく眠れます。毛布なら、肩口に巻き付けても薄いので肩にきれいに巻き付きます。寝返りしても隙間風が入りにくいので朝までぐっすり眠れるはずです。
なのに、なぜ羽毛布団の外側に毛布が掛けるという順番が、当たり前のように言われるようになったのでしょう。
1-2.滑りやすい化学繊維の毛布が原因。
昭和の時代に毛布の肌心地と柔らかさを追求したがために、気持ちの良い化学繊維の毛布ほど、羽毛がズレやすくなってしまったのです。
なぜならば、肌心地優先のため、毛布の繊維の太さがどんどん細くなってさらに、すべすべを追求して、さらに滑りやすくなったというわけです。
反対に、羽毛ふとんにはドレープ性といって、曲線になじみやすく滑りにくい特性があります。試しに、羽毛ふとんを床に置いてください。そして真ん中をもって持ち上げてみてください。力士でも持ち上がらないのでは?と思うほど床に吸い付きます。これをドレープ性、といいます。
しかし、化繊の毛布を下に敷いて羽毛を乗せて、もう一度ドレープ性のテストをしてみると、簡単に持ち上がります。もともととても軽い素材なので本来の軽さが出ます。
もし、ベッドで毛布をかけて寝ている人だとしたら、化学繊維の毛布によって、羽毛布団のドレープ性がなくなり、主寝具である羽毛ふとんが、寝返りのためにズレ落ちてしまうことになるわけです。つまり、ふとんの上に毛布という順番に、と言われ始めた経緯はここにあるというわけです。
羽毛布団の上に毛布をかけた方がいいと言われた理由の一つ目の理由がこれです。
1-3.汗を吸わない化学繊維の毛布が原因。
冬のダウンジャケットを着てどんなに動いてもムレ感はないですよね。その下の肌着にはポリエステル素材を使いませんよね。ポリエステルの肌着を着るくらいだったら、肌着なしのほうが良いと思いませんか?
化学繊維の毛布は汗を吸うことができず、お布団の中の湿度をコントロールすることができません。化学繊維の毛布は、羽毛の湿度、温度を調整する力を損ねてしまうのです。ここに羽毛布団の外側に毛布という順番に使うように言われ始めた理由の2つ目があるのです。
ポリエステルの糸が水分を吸う率を1としたら、木綿は20倍も水分を吸います。また、シルクや絹は30倍。ウール・羊毛類は40倍も水分を吸います。ちなみに羽毛はその力が、120倍と言われています。
羽毛ふとんの湿気の吸収率はポリエステルの120倍ですので、肌との間にムレ感を作るポリエステルの毛布があると、羽毛の良さが出せないことはお分かりいただけると思います。
羽毛布団の上に毛布をかけた方がいいと言われた理由の2つ目がこれです。
皆さんは寝床内気候という言葉を知っていますか?
お布団の中の気候のことです。
冬だけでなく一年中、人は肌の周りの温度が32~33度。湿度55~60%になると脳波がリラックスモードになり、眠りやすくなります。温度がちょうどよくても湿度が上がると眠りにくくなります。
ポリエステルの毛布・綿毛布・ウール毛布を掛けてサーモグラフで比較してみると、掛け始めはポリエステルの毛布が一番暖かいのですが、朝方になると毛布内の湿気があがり、コントロールできなくなり、最終的には湿気をコントロールできる、綿毛布やウール毛布のような天然繊維のほうが暖かくなるという結果がでています。
汗を吸わない化学繊維の毛布は、羽毛布団の外にかけた方がいい理由はここにあります。綿毛布やウール毛布などの天然繊維の毛布は掛布団の内側、つまり、肌に一番近いところかけて使う方が寝床内気候をベストに保てるというわけです。
2.羽毛布団の内側に毛布をかけて、快眠温度で安眠、熟睡!
前述2つの理由から化学繊維の毛布は外側で使うのが良いと判断されました。 しかし、そもそも毛布は副寝具なので、内側で使うのが本来の姿です。また、そちらのほうが暖かいのです。本来の姿で使う方法をお伝えします。
2-1.羽毛布団の内側に使える毛布を使おう!
そもそも毛布は副寝具ですから、羽毛布団の内側にかけて使ったほうが気持ちいいし、温かいのです。
毛布を内側に掛けると
×羽毛布団がずれてしまう。
×布団の中が蒸れてしまう。
このこの欠点を補えばいいわけです。
皆さんは、タオルケットを冬に使ったことがありますか?
羽毛の内側に使うのですが、はじめは綿ですので冷たいのですが、朝はポッカポカで目覚めることができますよ。
そしてまた、ウールの毛布ははじめからポカポカします。
セーターの素材ですから当たり前ですね。
綿素材とウール素材、シルクなどは羽毛布団との相性が良いため、ズレにくく、湿気もコントロールしてくれます。
これらの毛布は内側に掛けたほうが温かいのです。
その他、綿製品の毛布もあります。さらに最近では、吸湿性のある化学繊維の毛布や羽毛布団ががズレにくいように加工してある毛布も出ています。
櫻道ふとん店のある御殿場の冬の寒さには羽毛布団の他に、羽毛布団の内側に掛ける副寝具も大事だと考えています。 そこで「温泉毛布」「お日様のチカラ」「ほほ笑みケット」「温泉ケット」など羽毛布団の内側で使える副寝具(インナーケット)にとてもこだわっています。
天然繊維の毛布や、羽毛の内側で使える毛布を使ったほうが羽毛の外側に毛布をするよりも断絶温かいということはいうまでもありません。
《冬におすすめ》櫻道ふとん店の布団の組み合わせ
2-2.羽毛布団のズレない素材のカバーを掛ける。
羽毛布団にカバーを掛けていますか?
もし、羽毛布団にカバーを掛けないで、使っていいたらカバーをすることをおすすめいたします。
カバーには、汚れ防止と、羽毛生地の保護、そして、保温力増強のチカラがありますので、是非ともご使用ください。
このカバーの素材を一工夫すると、主寝具、副寝具の理想的な使い方ができます。
羽毛布団カバーの生地をガーゼ生地など、摩擦抵抗の高い生地にするのもズレにくくする一つの方法です。
通常の布団カバーの生地は1インチの中に180本以上の密度で織られていますが、ガーゼなら120本と目が粗く織られています。目が粗いと摩擦抵抗が大きくなります。また、柔らかい特性も出ます。
欠点は生地が弱いことです。この欠点を克服するため、二重ガーゼという生地があります。この二重ガーゼを使えば丈夫で長持ち柔らかく、毛布もズレにくくなります。
実は櫻道ふとん店オリジナルのズレない布団カバー「保様」(実用新案)があります。
生地は普通の綿100%の生地。シングルならサイズも普通の150×210cm。違いはベロと呼ばれるものがついているだけです。
長さの方つまり210㎝の真ん中あたりの横にベロがついていて、そのベロをベッドのスプリングの下に巻き込むのです。
こうすることにより、ベッドで寝返りをうっても、羽毛布団がずれて落下することなく、朝までふとんを正しい位置に保ってくれます。そこから「保様」と名付けました。
ベッドなどで羽毛布団をご利用の際に、朝になると布団が落ちていて、寒くて目が覚めるなどのご相談いただくことから、オリジナルで考案しました。お使いになったお客様から評判よく、隠れたヒット商品になっています。
2-3【毛布の生地で作った掛け布団カバーが便利!】
布団カバーと言ったら、綿100%というのが普通でしたが、最近は毛布の生地を使ったカバーも冬には出回るようになりました。
毛布の生地を使ったカバーなら、そもそもズレることがありません。
主寝具、副寝具の観点からみると、毛布の本来の保温力は発揮できません。しかし、画期的なカバーであることは確かで、肌触りなどはとても気持ちがいいです。
櫻道ふとん店でも「温泉毛布」の生地を使ったカバーを発売しました!とても気持ちいいカバーです。
2-4.羽毛布団の上にベッドスプレッドを使ってずれ防止。
ドイツから始まった羽毛布団のベッドメイキング。
昔の羽毛布団は現在のようにひとマスずつセパレートされていませんでした。言ってみれば大きな袋に羽毛を入れて、毎日羽毛をたたいて移動させ、ベッドスプレットというキルティングされた少し厚い生地の布をのせて羽毛を寄せて、羽毛布団ベッドからズレ落ちないようにしていました。
このベッドスプレッドをご家庭でも使用すれば、内側に好きな毛布を掛け、ベッドスプレッドで羽毛布団ごとキレイにベッドメイキングしてしまうというのも一つの手です。
羽毛布団の内側に毛布を掛けたことで、ずれたり、蒸れたりしては、羽毛布団のポテンシャルが十分に発揮できません。羽毛布団は優秀な主寝具、安眠、熟睡のために正しく使いたいですね。
3.《おまけ》羽毛布団と毛布の歴史。
現在のように冬に羽毛布団を使用するようになったのは、ドイツが一番古いといわれています。本格的に利用されるようになったのは約200年前からのようです。
イギリスを中心に、イタリア、フランスなどは「ブランケット」と呼ばれる「毛布」が主流だったようです。
レンガ造りを基本とし、暖房に関してはスチーム管を巡らし、部屋自体を暖めるという考え方です。そんな暖房の環境ですので寝具に対しても日本とは少々違うようです。
毛布をベッドに巻き付けシーツを上下に敷いたのがイギリス形式のホテル。こちらの形式は格式のあるホテルでも最近では見られなくなってきましたが、昭和の時代には、高級ホテルの寝室はイギリス式で、寒いなら部屋を暖める方式を採用していました。
羽毛布団が生まれたドイツでは、四角く縫った大きな布に羽毛を詰め込み、「ベッドメイキング」と称し一晩使った羽毛の偏りを毎日整え、ベッドスプレットというキルティングされた布を羽毛ふとんがベッドからズレ落ちないようにしていたようです。
つまり、毛布発祥の国では、羽毛布団を使っていなかった、また、羽毛発祥の国では毛布を使っていなかった。ということになります。
ですので羽毛布団と毛布の相性については、日本の住環境ならではのお話のようです。