1.へたらない敷布団はないけれど・・・
敷布団のへたりはなぜ起こるのでしょうか?
へたらない敷布団があるとうれしいですよね。
でも残念ながら、どんな敷布団でもへたりは起こってしまいます。
硬くてしっかりしていそうな鋼鉄製スプリング入りのベッドマットレスでさえ、人の体重によって、腰の部分からへたります。
反対に、床などの変形しないものはへたらないのですが、硬すぎて眠れません。
敷布団やマットレスの素材は、ある程度弾力のある、スプリング機能を持ったものです。
とはいえ、スプリング機能は永遠ではありません。
2.へたりと敷布団の寿命の関係
へたりはどうしても起きてしまうので、「へたらない布団」は存在しません。
けれど、へたりにくい素材はあります。
まずはへたる原因を知って、対策を練ってみましょう。
知っていると、敷布団の寿命を長くすることもできますよ。
2-1【木綿わたの敷布団 へたらないための対策】
木綿わたをはじめとする天然繊維は、湿気、乾燥で繊維が伸び縮みします。
すると1本1本だった繊維がからまりだします。
このからまりが毎日続くことによって、へたりが起きてしまいます。
特に敷布団の場合、体重がかかるうえに、人が1晩でかくといわれるコップ1杯分の汗の3分の2を毎晩引き受け続けるため、へたりが早いのです。
木綿わたの布団は「敷いて3年、掛けて5年」といわれます。
敷布団は3年で打ち直し(お直し)をして、この”からまり”を取ってあげましょう。
わたが元通りふっくらし、へたる前の敷布団に戻ります。
2-2【羊毛(ウール)敷布団はへたらない?】
羊毛も木綿わたと同じように湿気、乾燥による収縮と、重みでへたります。
ただ、木綿わたと違うのは、日に干してもふくらみが戻りません。
羊毛には人の髪の毛と同じようなキューティクルがあります。
これをスケールと呼びます。
このスケールがあることによって、ポリエステルの40倍もの汗を吸い、干さなくてもベトベトしないのです。
このスケールによって、羊毛は湿気を吸うと熱を発生し繊維自体が熱を帯びるため、冬はとてもあたたかいのです。
一方、吸った汗を放出し、繊維が自分で乾きますので、夏でも肌に気持ちがよいという特長も持っています。
ただし、このスケールのために、一度からまり合った繊維は簡単には解けません。
これをフェルト化といいます。毎日体重を支えて、押しつぶされた羊毛繊維は、どうしてもからまり合ってしまいます。
羊毛布団のへたりは、主にこれが原因です。
フェルト化した繊維は、天日干し程度ではふくらみが戻りません。
もっとも、つぶれたままでも吸湿して発熱する力は変わりませんので、はじめからつぶして使うこともあります。
2-3【キャメルの敷布団は?】
ラクダの毛をキャメルと呼びます。
ラクダが生息するのは寒暖の差がとても激しい砂漠。
日中50℃の気温が、夜になるとマイナス20℃という砂漠もあるようです。
そんな厳しい自然の中で生きているラクダの毛を使ってわたにしてあります。
羊毛とラクダは「獣毛繊維」と呼びます。
原料として私が見たことのあるラクダの繊維は、櫻道ふとん店でふだん利用している羊毛繊維よりも細かったので、敷布団をつくることはありませんでした。
しかし、もしも体重をしっかり支えられるキャメルの繊維があれば、へたるまでの時間を稼げるかもしれません。
ちなみに、敷布団としては繊維が細かったのですが、キャメルのわたで肌掛けをつくって試してみたことがあります。
羊毛と比べてみて、あまり変わりはなかったですwww。
2-4【化学繊維(ポリエステル)の敷布団はへたらない?】
ポリエステルわたの敷布団は、洗える敷布団の代表格です。
化学繊維ですから湿気はそんなに吸わないのですが、やはり寒暖の差や乾湿の繰り返しでからみ合います。
このからまりで敷布団がへたります。
2-5【ウレタン敷布団ならへたらない?】
ウレタン敷布団は、ウレタンの密度によって、へたりの寿命が決まります。
キッチンのスポンジのきめの細かさを見たことありますか?
よい品ほどきめが細かく、泡も柔らかですよね。
つぶれにくさでも、このきめが細かいほうがすぐれています。
マットレスにしても同じで、基本的に目が粗いほうが密度が低く、安価なものとなり、へたりが早いです。
目の粗い、密度が低いウレタンマットレスなら3年程度でへたりがきますが、きめが細かい(密度が高い)ウレタンマットレスなら、7~10年使えます。
2-6【高反発(樹脂)敷布団ならへたらない?】
樹脂もウレタン同様、石油製品です。敷布団の素材として使った場合、ウレタンマットレスと同じで約7年でへたります。
2-7【真綿(絹)の敷布団ならへたらない?】
真綿は蚕(カイコ)の繭をそのまま使ったわたのこと。
昔はみんな絹100%にあこがれてはいましたが、あまりにも高価なため、真綿を木綿わたの周りにうす~く巻いて、布団をつくったものです。
真綿100%、つまり絹100%の敷布団を、私は1度だけ見たことがあります。
お直しを依頼されたのですが、どれほどお金をかけたとしても、へたらないようにはできません。
絹も動物性蛋白なので、湿気と乾燥で伸縮し、やはりへたってしまうのです。
また、元々弾力性に乏しいため、体重がかかるとそれだけでへたりの原因となります。
真綿はそもそも敷布団に向いているとはいえません。
3.敷布団がへたると身体によくないわけとは
人の体を頭、胸、腰、足の4つに分けると、体重の8%が頭、35%が胸、44%が腰、13%が足となります。
腰の部分が一番重たいのです。
そのため、敷布団は腰の部分が一番へたり、次に胸の部分となります。
俗にいう「船底型」に変形していくわけです。
へたった敷布団に仰向けで眠った時、横から見ると、背中は曲がった状態です。
これだと腰に負担がかかり、腰痛を招きます。腰痛持ちの人にとっては、悪化させるために眠るようなものです。
また、へたった敷布団では仰向けの姿勢では眠りにくいために、横向きで眠ることが多くなります。その結果、朝起きた時に疲れが残りやすくなります。
蛇足ですが、既製品の敷布団によく見られるのが、はじめから「船底型」になってしまっている敷布団です。
プロの私から見たら、はじめからへたっている敷布団となります。
店頭で見て、縁が厚く、真ん中のほうが薄い敷布団は、できるだけ購入しないようにしましょう。とても寝心地が悪いですよ。
4.敷布団の素材、どれがへたらない?
へたらない敷布団はありませんが、「へたりにくい」という観点で選ぶことはできます。
へたりにくさの順番は、 ①ウレタン>②樹脂>③木綿わた>④ポリエステルわた>⑤羊毛
順番に素材の特性とへたりにくさを詳しくみていきましょう。
4-1【ウレタンの敷布団】
ウレタン素材は、ウレタンの密度が上がるとへたりにくくなります。
櫻道ふとん店の「腰いい寝」「快眠の王」などは200ニュートン以上の超高反発です。
こうなると、横から見たへたりは10年経ってもありませんが、軟化といって、使っているところと使っていないところの硬さに変化がでてきます。
約7~10年で、敷布団を打ち直し(お直し)すると、ウレタン芯の交換ができます。
4-2【樹脂の敷布団】
「エアウィーヴ」に代表される樹脂素材も密度と繊維の太さ、構造の3点が大きく関係します。
樹脂の場合、樹脂を糸状にしてぐちゃぐちゃに曲げ、インスタントラーメンのようにして固めます。
1本の糸が細いとへたりやすく、太いと長持ちになります。
また、密度が高いとへたりにくく、密度が低いとへたりやすくなります。
繊維は横に並べるよりも縦に並べたほうがへたりにくいため、最近は縦ばかりを並べた構造のマットレスも販売されています。こちらの方が長持ちです。
樹脂素材は熱に弱いため、ホットカーペットの上に敷いたり、電気毛布を使用したりすると、へたりが早くなります。
4-3【木綿わたの敷布団】
木綿わたの敷布団は「中高式」といって、腰のあたりのわたの量を多くしてつくります。
そして、日に当てればすぐにふくらみます。
ただし、繊維の収縮により、3年でへたります。
3年経ったら打ち直し(お直し)して、新品同様に使えます。
ただし、職人の技がないと中高式の敷布団はつくれません。
敷布団のオーダーもお直しも、国家検定士のいるお店に依頼しましょう。
中高式でない木綿わた敷布団は、早くへたります。
4-4【ポリエステルの敷布団】
既製品で「洗える」とうたっている布団や、「羊毛混」の表示がある敷布団の素材は、ほとんどがポリエステルわたです。
この繊維が細い場合、3ヶ月程度でへたってしまうことがありますので、ご注意ください。
また、はじめからへたったかのように真ん中が薄い敷布団が多いので、購入時に気をつけましょう。
4-5【羊毛の敷布団】
羊毛はフェルト化といって、繊維がからまって固まります。
そうなってもセーターと同じで、汗をたくさん吸い、湿気をたくさん吐き出します。
湿気に強く、冬も保温力があります。
へたるのは確かですが、ベッドのマットレスの上や、3つ折マットレスの上など、2枚敷を想定する使い方をすれば、へたりをあまり気にせず、長く使えます。
1枚でご使用になる場合、
櫻道ふとん店の「カルカル羊毛敷布団」や「カルつよ敷布団」、または手づくりの羊毛敷布団で中高式を注文すれば、
一般的な羊毛布団と比べへたらない状態が長続きします。
5.へたらない状態が続く敷布団の構造とは
現在、敷布団の素材で、1番へたらない状態が長続きするのは、超高反発ウレタンです。
密度が高いものならば、つぶれにくいのです。
たとえば、軽トラックの運転席のシートもウレタンです。
10年ほど経過すると、運転席は助手席に比べてぺちゃんこになってしまいます。
けれど、ベンツやレクサスなど高級車の運転席は購入時のまま硬いのです。
これがウレタンの密度の差です。
櫻道ふとん店の「腰いい寝」「快眠の王」は、へたらない状態が少しでも長く続くよう、高級車用のウレタンを使用しています。
6.敷布団をへたりにくくするお手入れ方法
へたらない敷布団はなくても、お手入れによってへたらない状態を長続きさせることは可能です。
へたりにくくするお手入れの仕方を探ります。
6-1【敷布団の一昼夜干しはへたりの解消にはならない】
一昼夜連続して干すことをすすめているサイトがありました。
布団を夜干すと、湿気をたくさん吸います。
そして、じめじめした布団になります。
そもそも布団を夜露に当てるのはよくないのです。
この昼夜干しというのは、かつて修験者やお坊さんが邪気を祓うために使った呪法だそうです。
たとえば亡くなった方の布団を使う場合とか、病気を早く回復したい場合などの、いわば、おまじないのようなものですね。
昼夜干しの前に塩で清めておこなうようです。
精神的にはそれもありかもしれません。
が、布団のへたりを解消したり、クリーンにするのが目的なら、
クリーニングにお出しいただくのがよいと思います。
6-2【敷布団のクリーニング】
ウレタンや樹脂の布団のなかには、「洗える」と表示しているものがありますね。
しかし、家庭やコインランドリーで洗うより、クリーニングに出すことをおすすめします。
家庭で洗うのは、重量的にかなり大変な作業になりますし、コインランドリーでは本当にその布団の素材に合った洗い方、乾燥の仕方ができるかどうかの保証がありません。
へたりにくくすることも、できそうにありません。
布団専門のクリーニングができるお店に出し、適切なお手入れをすることが、へたった布団を回復させ、へたらない状態を少しでも長く保つことにつながると思います。
6-3【敷布団の打ち直し】
樹脂の敷布団は打ち直し(お直し)ができません。
また、木綿わた敷布団の打ち直しは聞いたことがある方が多いでしょう。
ウレタン入りの布団を打ち直し(お直し)できるというのは、聞いたことがないかもしれません。
でも櫻道ふとん店では、はじめからお直しを想定して敷布団を制作しています。
木綿わたは打ち直し、芯のウレタンは新品に交換することで、購入時のようなボリュームを復活させるのです。
へたらないのは不可能ですが、何度でも新品同様に復活するので、へたりを気にせずに長くお使いいただけますよ。
7.櫻道ふとん店の敷布団がへたりにくいわけ
櫻道ふとん店のウレタン入り敷布団「腰いい寝」「快眠の王」は、打ち直しができるだけでなく、そもそも、ほかのどの製品よりもへたりにくいつくりです。
その秘密は、ウレタンの密度の高さにあります。
具体的な数値は企業秘密ですが、長年使ってもへたりが来にくい、高密度な高級車用のウレタンを使用しているのです。
その感触は、ぜひお試しレンタルでご体感ください。